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低リン血性くる病・骨軟化症の診療について、専門医がわかりやすく解説していきます。

【診断編】くる病・骨軟化症の診断マニュアルの解説

本コンテンツは、日本内分泌学会、日本骨代謝学会より許諾を得て「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」を転載しています。

解説 1

定義

 くる病、骨軟化症は、骨石灰化障害を特徴とする疾患である。このうち、成長軟骨帯閉鎖以前に発症するものを、くる病と呼ぶ。

症候

 くる病では、成長障害、O脚・X脚などの骨変形、脊柱の弯曲、頭蓋癆、大泉門の開離、肋骨念珠、関節腫脹が認められることがある。骨軟化症では、骨痛や筋力低下に加え、胸郭の変形(鳩胸)、脊柱の変形、偽骨折(Looser’s zone)が生じることがある。

検査所見

 単純骨X線でのくる病変化には、骨幹端の杯状陥凹、骨端線の拡大や毛ばだちがある(図1)。低石灰化領域を示すLooser’s zoneは、骨軟化症に特異的である(図2)。二重エネルギーX線吸収測定法などによる骨密度の測定では、骨中のカルシウム含量が測定される。従って骨軟化症では、骨密度の低下が認められる。このため骨密度の低下が認められる場合には、骨粗鬆症の診断の前に骨軟化症の可能性を考慮する必要がある。骨軟化症患者では、骨シンチグラフィーで肋軟骨への数珠状の取り込みなど、多発性の取り込みが認められることが多い(図3)。骨軟化症患者の生化学所見では、高骨型アルカリホスファターゼ血症が特徴的であり、一部を除いて慢性の低リン血症も認められる。一方くる病患者では、低リン血症ではなく低カルシウム血症が主な異常となる場合がある。

図1.単純X線でのくる病所見 図2. Looser’ s zone 図3.骨軟化症患者に認められる骨シンチグラフィーでの多発取り込み

 リン摂取不足、腸管リン吸収障害などによるリン欠乏の場合、およびビタミンD欠乏の一部では、尿細管リン再吸収閾値(TmP/GFR)は低値を示さない。一方それ以外の原因による低リン血症では、TmP/GFRの低下が認められる。TmP/GFRは、下記のノモグラムを用い、血中リン濃度とCP04/Ccreat(あるいはTRP)を結ぶ直線がTmP/GFR軸と交わる値より求める。成人基準値 2.3 ? 4.3mg/dl。

CP04/Ccreat=(尿中リン×血中クレアチニン)/(尿中クレアチニン×血中リン)=FEP04(fractional excretion of phosphate)

TRP(tubular reabsorption of phosphate)= 1-CP04/Ccreat

図4:TmP/GFR算出のためのノモグラム

▲図4:TmP/GFR算出のためのノモグラム

Reprinted from The Lancet, Vol. 2, Walton RJm, Bi jyoet OL, Nomogram for the derivation of renal tubular threshold phosphate concentration, Pages No.309-310, Copyright 1975, with permission from Elsevier.

POINT

  • くる病では、単純骨X線像で特徴的な骨幹端の杯状陥凹(cupping)、骨幹端の拡大(flaring)、毛羽立ち(fraying)が認められる。
  • 骨軟化症では、画像診断は難しいが、骨X線像で低石灰化領域を示すLooser‘s zone(偽骨折)が認められることがある。また、二重エネルギーX線吸収測定法などでは骨密度の低下が認められるため、骨粗鬆症との鑑別が重要となる。骨シンチグラフィーでは肋軟骨への数珠状の取り込みなど、多発性の取り込みが認められることが多い。
  • 尿細管リン再吸収閾値(TmP/GFR)の低下は、リン摂取不足、腸管リン吸収障害などによるリン欠乏、およびビタミンD欠乏では認められないため、それ以外の原因による低リン血症との鑑別の一助となる。

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